なろう系漫画レビュー空間『異世界転生されてねえ』

 

概要

  • 航島 カズト(著), タンサン(その他), 夕薙(その他)
  • 2018年から小説家になろうで投稿開始され、2022年12月現在投稿中
  • 『人助けして転生させられたけど現世だった』という変化球パターン

 

現代×なろう、というありそうでなかったジャンルを開拓している人気作。
原作の小説家になろうで4年を超えて投稿を続けているのは本当にすごいと思います。
漫画に関しては、30代のオタクにとってはどこか馴染みやすい絵と王道設定で懐かしい気持ちになる作品です。こういうの読んでました。

なろうって、異世界に飛ばされていたからなんとなくわけも分からず読んでいたけど、現代を舞台にすると詳しい分なぜか違和感でるよね、という不思議な学びを得ました。
そもそも、私のようなおっさんは相手にしていない作品。おっさんから見ると少し後ろ向きに聞こえる意見が多い点にご了承ください。

感想

安定した、どっかで見たことある高校生バトル漫画

ネガティブな言い方になってしまっているのが申し訳ないです。
異世界なろう系がテンプレとして極まっている中、逆に新しいとも取れますが、
「普通のバトル漫画」に埋もれて育った世代(今アラサー)としては、異世界なろう系よりも「どっかで読んだなー」と思ってしまいました。
ある日目覚める不思議な能力、日々の日常切り裂く暴力、みんなが認める俺は有能!
ジャンプ系と比べるとなろう的な「俺つえー」要素がある程度追加されてはいるものの、終始敵を圧倒し続けて称号フルコンプRTA回すような作品よりは苦戦します。

女の子についても、ヒロインが委員長の黒髪ロング。その妹が少し気が強め。式神は可愛い幼女。
100点ですね。
下画像は妹登場シーンの1ページですが、「優等生姉とお姉ちゃん想いのお転婆妹」が伝わりますね。鉄板キャラはやはり魅力的ですし、それをしっかり1ページで説明できるのはなろう系漫画として安定しています。

異世界転生されてねぇ ヒロインが登場する場面
航島 カズト(著), タンサン(その他), 夕薙 (その他, 『異世界転生されてねえ』1巻, 主婦と生活社, 2019/12, p35

舞台が現代になると、なろう系が難しくなると学ぶ

なろう系作品ということもあり、主人公がなんか強かったり、俺の式神が相手を圧倒したり、由緒正しき家同士の戦いに助っ人して感謝されたり、男の子が大好きな胸熱展開がギュッと注ぎ込まれた作品です。
もちろん普通に読めるのです。
ただ、なぜか胸焼けしがちで、没頭して読みづらい部分がある気がします。
同じようなノリや、もっと麻薬漬けにしてくる異世界なろう系を読んでいるはずなのに。

多分ですが、舞台が現代だからです。

異世界というよくわからない世界でやっていたから気づかないで住んでいた設定の粗さが、現代になると見えてくるという問題があります。
これは作品の良し悪しではなく、舞台の問題だと思います。
舞台を現代で設定した上で男の子の夢モリモリにしてしまうと、ギャップに気づいてなんか一歩引いてしまうんですよね。
私だけかもしれないですが。

異世界なろう系は、「外国に行ったときに羽目を外して風俗街に行く」みたいなものなのかもしれません。

とても良いマーケティングで、作者の頭が良い

先に書いた通りアラサーからすると「どっかで見たことがあるバトルもの なろう風仕立て」となります。
しかし、「異世界なろう系とともに青春を過ごしている10代」向けにはこの作品は光るはず。

今まで培われた面白い鉄板のバトル漫画設定に、今の俗世で流行っている作品を混ぜて提供するという、マーケティングの偉い人が提唱していそうな何かを実践しているわけです。

  • タイトルに「異世界」の文字を入れて異世界漁っている多くの人にアクセス
  • 異世界系好んで読んでいる層に当たる内容=長年で完成されたバトル漫画テンプレがベース
  • 現代の人が慣れ親しみ求めている なろう成分を含有

確かに、30代のおっさんからすると、「もう何回も読んだな」という既視感は感じられるでしょう。
しかし、そもそもなろう系自体、30代のおっさん層は多くはないのです。
喜ばせるべきは10代、そう考えたときにこの作品はとても正しいことをやっていて、多くの人を幸せにしているはずです。

「顧客が本当に欲しいものは顧客も知らない」というフォードだかどっかの本で読んだような格言が思い出されます。

大山 悠二

31歳、独身。中学生の頃から主に現実逃避のために漫画を読んできた。詳しいジャンルは00年代の萌え系、異世界系など。

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