なろう系漫画レビュー空間『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』
概要
- えぞぎんぎつね(著),アヤノマサキ (著),TEDDY (その他)
- 2017年から2020年まで小説家になろうで投稿
- 『弱い界隈に下って俺つえー』パターン
『弱い界隈に下って俺つえー』パターンは異世界転生よりも優れていると思っております。
なぜなら、違和感が出にくいから。
今まで頑張った経歴があり、辺境に下る理由があり、かつ異世界転生というイレギュラーが無いのでお話が破綻しにくい!
現代機器の取り扱いや現代知識のアヤシイところがなく、主人公の戦闘力の過度なインフレも起きにくいのです。
その中でも本作品は王道な設定かつ内容。
エルフがいて、狼がいて、のじゃロリがいる。
これで良いのです。
タイトルも、情景が目に浮かぶ具体性でなろう的に◎ですね。
なろう系はまずはタイトルを味わうべきだと思っています。
レビュー
陰キャ系おっさんにしっかり刺さる
陰キャ系おっさんにしっかり刺さる要素を抑えています。
・主人公は若くない、おっさんなりかけの年齢
・もともとしっかりとした実力者
・現地で受け入れられる描写がしっかり描かれている
『弱い界隈に下って俺つえー』パターンは、「中年でもそこそこイケてるポジションになりてぇ」欲を満たしてくれる作品ですよね。
確かに、30歳近くなると高校生の転生モノなどは読みにくくなってきます。ノリとか、行動とか、何百回と読んでしまったテンプレ的展開とか。
この作品ではそのためのポイントがしっかり描かれており、「抑えるべきところを抑えているな」という印象です。
なので、しっかり楽しく読めます。
一昔前のなろう系は、読んでいて少し違和感のある作品が多かった印象ですが、最近は本当に質が上がってきたと思います。
どれ選んでも、ある程度読めてしまいます。
もう、コマ割りとかまで王道の割合などできているような気がします。
巨乳のエルフ、フェンリル、魔王軍のロリ幹部
なろう系の鉄板、マックにおけるバーガー×ポテト×コーラ的なものがしっかりと意識して押さえられています。
例えばフェンリル枠。
フェンリルとの違いを出すためか、魔狼(英語ではWarg)となっていますが、中身は一緒。
最初は凛々しく、その後ただの飼い犬と化します。
次に、悪魔軍のロリ幹部枠。
喋り方から露出の仕方から、狙ってますね。
服としてどうなのかな、と思いますが、なろう系なのでこのスタイルが正しいでしょう。
黒いパンツは転スラのミリムのデザインから影響を受けているのでしょうか。
転スラのミリム、無職転生のキシリカキシリスと、
有名所のなろう系にも採用されている「強キャラ人外ロリ」は、なろう系で使いやすいみたいです。
定期的な温泉回
村に温泉があるという設定なので、温泉回が早い。そして多い。
中身濃い温泉回というわけではないですが、温泉回でしか摂取できない栄養があるので助かりますね。
万能魔法使いで様々ななろう系要素
最近は異世界やなろう系界隈でも「エッジをいかに効かせるか」という方向に頑張る作品も多い中、この作品の主人公はオールマイティーにこなします。
戦闘はもちろん、建築周りも魔法で効率化。
木の家ばかりの村でレンガの家を建ててしまいます。
つまみ食い程度ですが、生産型のなろう系としても楽しめます。
水戸黄門的な作品の中で光る作品とは何か
この作品は、流行る作品のポイントを丁寧に押さえた作品であり、普通に読めます。面白かったです。
数年前になろう系コミカライズで見られた、「商業誌初めての漫画家のタマゴに描かせた即席漫画で読みにくい」ということも全く無く、読めます。
なろう系として酷使されているテンプレが散見されますが、なろう系を見ている層なんてそのテンプレを見に来てますからね。
現代の水戸黄門であり、大人向けのアンパンマン。
その意味では、この作品はとても正しく良質でした。
ただ、
「水戸黄門の中で特に好きなエピソードは?」
「アンパンマンのエピソードで一番好きなお話は?」
と言われた時に上がってくるような話になりきれていない感が唯一もったいないと思いました。
同じようななろう系を10読んだら、3位とか4位な作品なのです。
では、テンプレを押さえに行ったなろう系の中で輝くためにはどうすればよいのか。
この作品を読んでみて、
「愛ゆえのこだわり」
だと感じました。
まともな作品だからこそ、もうちょい、作者もしくは漫画担当の方の愛ゆえのこだわりが見たかった。
ヒロインの巨乳エルフを押すなら、容姿や胸の肉付きのラインへのこだわり、小話でより内面を見せてくれるものが欲しかった。
悪魔軍のロリ幹部にこだわるなら、大きく登場するコマの描き込みやアングルをもう少し見たかったし、テンプレなやりとりだけではなくオリジナルな一面を知りたかった。
膝に矢を受けたという設定にこだわるなら、もう少し膝に矢を受けたことでの不自由さやそこから始まる話を見てみたかった。
読者からの身勝手な感想ではありますが、そう思ってしまいました。
テンプレ的作品なのに覚えているなろう系としては、
「虫かぶり姫」:絵が上手く、特に主人公の髪の毛の描き込みがとても丁寧でフワフワだった。
「異世界ナンパ」:そもそも能力が特殊ですが、それよりも「コミュ障が人に話しかけられない時の気持ちの描写」がとても丁寧でこだわっていた。
あたりでしょうか。
何かしらこだわりがあると、少なくとも記憶に残る作品になっています。
漫画の後半になると絵柄が変わる現象も大いにありうるので、今後もぜひ追っていきたいと思います。