あずまんが大王はオタク界の歴史的書物なので読んでおこう
2000年代から日本のオタク文化において人気となったジャンルの一つは「萌え四コマ」ですが、その人気の引き金となった1998年連載開始の作品といえば?
(2123年, Jeopardy!)
そう、あずまんが大王です。
あの漫画がなければ、「らき★すた」も「ゆゆ式」も「ぼっちざろっく」もなかったのです。
あずまんが大王を読んだことがある人もない人も、漫画界におけるその影響力の大きさを今一度確認し、読んだことがない人は読みましょう。
漫画好きのレビューはこちらから確認してください。
要約:特に大事件が起きない萌え×四コマの作風を決定付けた
かわいい女の子が出てきて特に事件がおこらない四コマ漫画で初めて大ヒットをつくりました。
萌え四コマの成功のパターンを漫画界隈に示し、その後たくさんの萌え四コマ作品が作られることになりました。
あずまんが大王がなければ、「ぼっちざろっく」のぼっちちゃんにも出会えませんでした。
基本情報
作者 : あずまきよひこ
出版社 : メディアワークス(無印)、小学館(新装版)
掲載雑誌 : 月間コミック電撃大王
連載 : 1998年12月18日 ~ 2002年3月21日
アニメ版放送 : 2002年4月 ~ 9月
あずまんが大王ってどんな内容?
- 学園モノのコメディ4コマ漫画
- 登場人物の多くは女子高生で、得手の主人公は存在しない
- メインキャラクターの入学から卒業までの高校3年間が舞台
- 特に事件などは起こらず、日常的な内容が描かれている
- 特に性的な描写などは無い(が、やはり男性向けだとは感じる)
時代背景
1998年は、オタク文化は一般的に広まっていませんでしたが、少年ジャンプのような一般向けの漫画はとても人気な時代で、漫画、特に少年漫画は子どもたちに市民権を得ていました。
また、1998年には秋葉原のラジオ会館に海洋堂(フィギュア専門店)が出店したことからわかるように、オタク文化がぐんぐん成長している時代でもあります。
その少し前のエヴァンゲリオン人気などにより、オタクの数は増えてきていたのです。
ちなみに1998年は、(日本国内では)DVDよりもビデオカセットの方が売上が多い時代で、2002年にやっと逆転します。深夜アニメの録画にビデオテープを使っていた時代です。
日本国内では未だアニメやオタク文化への理解は一般的ではなく、コアな漫画を読んでいるクラスメートを白い目で見るような文化が残っていました。
日本においてオタクという存在が身近になったのは、2005年のドラマ「電車男」まで待たなければいけません。
なので、ある程度オタクが多いと言えども、「一般人が読む漫画」と「オタクが読む漫画」には大きな壁があった印象です。
連載前後のアニメや漫画やゲームの情報を適当に抜き出すと下記のようになります。
- ときめきメモリアル(PCエンジン, 他) : 1994年
- Windows95 発売 : 1995年
- 新世紀エヴァンゲリオン(アニメ) : 1995年 ~ 1996年
- サクラ大戦(セガサターン) : 1996年
- カードキャプターさくら(漫画) : 1996年 ~ 2000年
- ポケットモンスター(赤、緑) 発売(日本) : 1996年
- To Heart(PCゲーム) 発売 : 1997年5月
- HUNTER×HUNTER(漫画) : 1998年3月 ~
- カードキャプターさくら クロウカード編(アニメ) : 1998年4月 ~ 1999年6月
- Windows98 発売:1998年6月25日
- シャーマンキング(漫画) : 1998年6月 ~ 2004年8月
- ラブひな(漫画) : 1998年 ~ 2001年
- まほろまてぃっく(漫画) : 1998年12月 ~ 2004年
- ヒカルの碁(漫画) : 1999年1月 ~ 2003年
- ToHeart(アニメ) : 1999年4月 ~ 7月
- Kanon(PCゲーム) : 1999年6月
- テニスの王子様(漫画) : 1999年7月 ~ 2008年
- ポケットモンスター金 銀(ゲームボーイカラー) : 1999年
- おジャ魔女どれみ 第一~第四シーズン(アニメ): 1999年2月 ~ 2003年1月
- Windows ME 発売 : 2000年9月
- AIR(PCゲーム) : 2000年9月
- 最終兵器彼女(漫画) : 2000年1月 ~ 2001年10月
- 君が望む永遠(PCゲーム) : 2001年8月
- 鋼の錬金術師(漫画) : 2001年8月 ~ 2010年7月
- まんがタイムきらら(4コマ漫画専門誌) : 2002年5月 ~
- D.C. ~ダ・カーポ~(PCゲーム) : 2002年6月
- 電車男(ドラマ) : 2005年7月~9月
- ポケットモンスター ルビー・サファイア : 2002年11月
メイドさん人気の火付け役のひとつ、「まほろまてぃっく」とほぼ同じ時期に連載開始していますね。
少年漫画をみても、シャーマンキングやハンターハンター、ヒカルの碁と一緒の時期ということで、少年ジャンプがとても盛り上がっていました。
オタク向けの作品を観ても、ときめきメモリアル、新世紀エヴァンゲリオン、サクラ大戦と、今でも名前が通っているビッグタイトルが見受けられ、界隈が大きく盛り上がっていることがわかりますね。
なしとげたこと
累計325万部(新装版3巻初版の宣伝文のため、現在はそれ以上)を売上げました。
2003年7月時点で、関連商品の売上で30億円を超えていました。
ゲーム化もされました。
一般向けではありませんがオタク界隈でとても人気な作品となり、「萌え四コマ漫画」という漫画ジャンルを確立させました。
萌え四コマ漫画の特徴は以下です。
- 主要な登場人物がかわいい女の子
- ストーリーに大きな起伏がない、もしくは重視されない
- 一つの話に大きな起承転結が無い、もしくは薄い
- キャラクターの特徴や性格がピックアップされた、キャラクター先行型のストーリーが多い
あずまんが大王があったから生まれた(と思われる作品や雑誌)
あずまんが大王の成功後、様々な萌え四コマが生まれました。
いくつかは大成功を収めていますが、これらもあずまんが大王が無ければ生まれなかったでしょう。
- らき★すた : 2004年1月? ~
- みなみけ : 2004年3月? ~
- 日常 : 2006年11月 ~
特に、まんがタイムきららは「萌え四コマ」の人気流れがあり作られた四コマ漫画専門雑誌なので、きらら系はあずまんが大王が存在しなければ生まれなかったはずです。
きらら系全般
- けいおん
- ご注文はうさぎですか
- ひだまりスケッチ
- ドージンワーク
- ゆるキャン
- ぼっちざろっく
また、4コマ漫画以外でも、日常系の漫画に大きな影響を与えたはずです。
オタクに向けたキャラ先行型の日常マンガは影響を受けざるを得なかったでしょう。
萌え四コマの元祖、というわけではなさそう
しかし、「あずまんが大王」が流行る前から、「萌え四コマ」のような作品は存在していました。
なので、完全な「史上始めての萌え四コマ」というわけでは無いようです。
「4コマ漫画読みのblog(跡地)」様では、ももいろシスターズ(作者:ももせたまみ)などが挙げられています。
また、オチが弱いような四コマ漫画としては、人気ゲームなどのアンソロジーコミックなどでも散見できるようです。
なので、「萌え四コマでヒットをつくった初めての作品」が正しいです。
あずまんが大王の魅力
特に何もないのに、なぜか読める
特別なストーリーが無いのに、楽しく読めます。
女子高生が学校に行って授業を受けておしゃべりをする場面を漫画にして、なぜ楽しく読めるのか謎です。
あずまんが大王よりも後に、あずまんが大王の影響を受けて描かれた作品よりもなぜか楽しく読めてしまう場合があります。
私が感じる理由は、「エッジが効いているキャラの行動が自然」で、「そのキャラの行動がときに想像を超えてくる」ということです。
あずまんが大王-likeな作品は、キャラを特徴づけて可愛さをアピールしたいがあまり、行動に違和感があったり、何番煎じだかわからないネタに走ってしまうことが少なくありません。
その点あずまんが大王は自然で、かつ、時々は想像を超えたオチがあるのです。
この4コマは特に私が好きなものの一つです。
大阪のキャラがよく出ていて、かつ、オチが予想外。
今日、あずまんが大王を読むと
私はあずまんが大王が好きで、何度も読み返しているので公平な目を持っているとは言えません。
が、今日でもとても楽しく読むことができます。
新装版も出ており、2000年前後特有の少し古いテイストの絵が気になる人も安心です。
オタク史を作ろうとすると、必ず名前が出てくる歴史的書物です。
この時代に生まれたことを感謝しつつ、ぜひ読んでみましょう。
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