Nujabesとは Lo-fi HipHopレジェンドの代表曲と経歴、そしてサムライチャンプルー

Nujabes(別名:瀬場 淳, 本名:山田淳)は「Lo-fi HiphopのGod Father」や「日本におけるJazzy Hiphopの第一人者」と言われるトラックメーカー、アーティスト、音楽プロデューサーです。
「世界で最も有名な日本人トラックメーカー」とも言われています。
2010年2月に交通事故のため36歳の若さで亡くなりましたが、今日まで世界的に愛され続けています。

ちなみに、Nujabesという名前は活動名である「Jun Seba」を逆さにしたものです。

nujbesの音楽の特徴

暖かく叙情的な音楽はNujabesの最大の特徴です。
打ち込みやサンプリングが多様されるHipHopの世界では「温かみのある音楽」を作り出すのことは難しいことですが、Nujabesはその稀有な才能で暖かくどこか懐かしいような音楽を作り出しました。

HipHopという領域で活動をしつつも、その温かで静かながら印象的なメロディを重視するようなスタイルが感じられ、度々ヒーリングミュージックやニューエイジ音楽とのつながりを感じさせます。

また当時のHopHopはサンプリングした音を1音ずつ細かく切って編集し新しいメロディを作り出すのが主流でしたが、Nujabesはより大きな単位でメロディを大胆に採用していました。※1
例えば、代表曲の一つである”Reflection Eternal”は巨勢典子さんの”I Miss You”をサンプリングしていますが、使っているフレーズがそのままわかる大きさです。

「最高の2小節を見つけたい」というのがNujabesの口癖だったそうで、ビートへのこだわりのなかでも、とくにループ巻を重視していたと言われています。※3

※私自身は音楽を語れるほどの知識を持ち合わせておりませんので、この部分は複数の記事やインタビューを特に参考にしてまとめました。
※人物名に対する敬称があったりなかったりしますが、その場で自然に感じたようにしています。不快に思った方に対しては申し訳ございません。

Nujabesの軌跡

1974年2月7日生まれ。東京都出身。

1995年、21歳の時に渋谷宇田川町の高野ビル4Fでレコード店「Guinness Records」(当初は「ボンゴ・フューリー・レコード」)を開店。
試聴スペースの前に椅子が置かれていたり、当時の渋谷のレコード店で度々見かける威圧的な雰囲気がなく、リラックスして音楽を楽しめる居心地の良い空間だったと言われています。
また、「レコード(店)は自分のトラックを作るための情報センターにしていた感じだった」という感想も当時から交友のあったm-floからのインタビューで明らかになっています。※1

1998年、音楽プロデューサーNujabesとして、本格的にトラック制作を開始。

1999年、自身のレーベル「Hyde Out Productions」(その後の表記は「Hydeout Productions」)から12インチシングルレコードをリリース。
日本のレーベルということをあえて伏せていたため、日本国内でもNujabesが海外プロデューサーであるという勘違いが発生しました。
また、初期の作品は12インチレコードのみでリリースされていたため、一般に流通しにくいものでした。

2001年、Luv(sic)をリリース。
当時バークレーに住んでいたいshing02に対し、Eメールで音楽制作を提案し、実現しました。
shing02からNujabesへの第一印象は、「ちょっとマイペースな人」だそうです。※3

2002年、Luv(sic)Part2をリリース。

2003年8月、1stアルバムである『Metaphorical Music』をリリース。
予想より反響があり、レコード店からの追加オーダーが間に合わなくなる場面も。
また、当時のヒップホップとしては珍しく、女性からの反響も大きかったと言われています。

2004年、TVアニメ『サムライチャンプルー』が放送。
音楽制作メンバーの中に名を連ね、オープニング曲、エンディング曲等をプロデュースしました。
『サムライチャンプルー』は当時の日本での反響は良いわけではありませんでした。
「『アニメとヒップホップ』という斬新な組み合わせが当時のオタクにはあまり受け入れられなかったのではないか」と監督である渡辺信一郎氏は語っています。※3

また、同年にはファッションブランドのコムデギャルソンのファッションショーで音楽プロデューサーを務めました。
一般への認知は低いものの、音楽好きや感度の高いコミュニティでの知名度や評価はとても高かったことが伺えます。

2005年、アメリカのカートゥーンネットワークで『サムライチャンプルー』の放映。
アメリカでの評価は高く、再放送が複数回行われました。
その他の地域でも放映され人気に。

11月に2ndアルバム『Modal Soul』をリリース。
生演奏を取り入れたり、ハウスミュージックの要素を取り入れたりと、音楽に変化が現れたアルバムです。
Luv(sic)Part3はこの『Modal Soul』の収録曲の一つとして収録されていますが、アメリカ国内で特に人気を博しました。

この頃には日本を代表するトラックメーカー兼プロデューサーとして地位を確立しており、経営していたレコードショップも複数店舗への展開を果たしていました。

2010年2月、交通事故のため36歳の若さで亡くなりました。
6月末に渋谷のGuinness Recordsも惜しまれつつ閉店しました。

2011年、生前に制作を開始していた、シングル「Luv(sic) Part4」がリリースされました。
また、3rdアルバム『Spiritual State』が発売されました。

2012年、生前に制作を開始していた、シングル「Luv(sic) Part5」がリリースされました。

2013年、Nujabesが残した携帯電話に入っていた「<Grand Finale>」という題名がついたビートを元に制作された「Luv(sic) Grand Finale/Part6」がリリースされました。

2010年代後半からYoutubeを中心に「Lo-fi Hip Hop」というジャンルが流行り、Nujabesの認知が更に広い範囲へ広まりました。

2018年、Spotifyが発表した「海外で最も再生された日本国内のアーティスト」でNujabesが3位となりました。

”ヒップホップをほかの音楽ジャンルと同レベルにしたい“と言い続けたNujabesの想いは現実になったと言えるのではないでしょうか。
少なくとも、その功績と音楽の影響力でHipHopが新たな展開を見せ、ずっと多くの人に愛され届くようになりました。

代表曲・おすすめ曲

Luv(sic)シリーズ


※動画は Part1にあたる曲

「Nujabesを知ったらまずはこれを聞こう」と言われるやつ。
Part3までとPart4-6はスター・ウォーズと同じくらい結構別のもので、そもそもPart3までで一旦終わりにする予定だったとのこと。
Part4から6は、Nujabesの死後に生前の制作やビートを元に完成されました。

「Part1から聞かなければいけない」というわけでは全く無く、なんとなく好きなところから聞くと良いと思います。
個人的には、Part2やPart3あたりが好きです。

Reflection Eternal

Nujabesの曲の中でも特に人気が高い一曲。
前述の通り、巨勢典子さんの”I Miss You”をサンプリングして作られていますが、Refrection Eternalの人気から、巨勢典子さんにも更に注目が集まったそうです。
“I Miss You”もとても素敵な曲です。

Lady Brown


1stアルバム『Metaphorical Music』に収録されています。
ラップとメロディーが不思議とお互い邪魔をせず、心地よく聴き続けることができます。
ルイス・ボンファの『The Shade of the Mango Tree』という曲がサンプリングされています。

Feather


Luv(sic)シリーズ以外でよく聞く人気曲の一つ。

Perfect Circle


ゆったりとしたビートが特徴的な曲。
アルバム『Luv(Sic)Hexalogy』に収録されています。

World’s end Rhapsody


ビートと歌声とピアノの音がいい感じに調和している一曲。
Nujabesの曲の中では比較的ポップな印象です。

Kumomi


幼少期の原風景をテーマにした一曲。
懐かしさや暖かさが特徴的なNujabesですが、そのNujabesが「家族と訪れた西伊豆の雲見での美しい思い出」をイメージして曲を作成しており、まさに懐かしくもどこか淋しげで、感傷的に仕上がっています。

サムライチャンプルーとNujabes

フジテレビ、マングローブ、下井草チャンプルーズ

サムライチャンプルーは、2004年5月から9月にかけて放送されたアニメ作品です。
同時に漫画も連載されました。漫画では、アニメとは異なるエピソードが描かれています。
ここでは、主にアニメ作品について触れます。

原作:マングローブ
監督:渡辺信一郎
音楽:Tsutchie、 fat jon, Nujabes、 FORCE OF NATURE

話数:全26話
特徴:
侍が帯刀している世界ながら、今の日本の若者言葉を使い、金髪やピアスやヒューマンビートボックスが登場する、時代考察をあえて無視した独特な雰囲気が特徴です。
ヒップホップ的な要素が特に散りばめられていて、一見不思議な世界観ながら、その独特な雰囲気が多くの人に愛されています。

Nujabesは、オープニング曲「Battlecry」の作曲、エンディング曲「四季ノ唄」のトラック制作などを担当しました。

有名アニメ監督、渡辺信一郎監督が音楽に造詣が深かった

渡辺信一郎は、『カウボーイビバップ(1998)』『坂道のアポロン(2012)』などで知られるアニメ監督です。
音楽を趣味としており、サムライチャンプルー以前に監督を担当した『カウボーイビバップ』ではジャズ、ブルース、ロック、テクノなど様々なジャンルの音楽を使いました。
『カウボーイビバップ』での大成功があり、渡辺監督が楽曲までこだわることができるようになり生まれたのがNujabesを起用した『サムライチャンプルー』でした。

サムライチャンプルーの制作当時、「週末は渋谷のレコード店で新譜を探していた」とインタビューで答えています。*1
Nujabesともその新譜探しの中で出会ったとのことですが、Nujabesはインタビュー等を受けることがほとんど無かったため、はじめはNujabesが日本人であることもわからなかったそうです。
Nujabesは渡辺信一郎監督からのオファーに対して受けるか迷っていましたが、アニメにも詳しい友人のアーティスト、m-floの☆Taku Takahashi氏に相談して受けることに決めました。
☆Taku Takahashi氏は「”ナベシン”だよ?やったほうがいいよ」と激推ししたそうです。*1

制作会社のマングローブは残念ながら破産済み

2015年9月5日アーカイブされたページ

『サムライチャンプルー』が初作品ながら十分なクオリティで仕上げたアニメ制作会社のマングローブでしたが、2015年に破産をしてしまいます。
『サムライチャンプルー』の他にも、『神のみぞ知るセカイ』、『ハヤテのごとく!』の第3期および劇場版1本など人気な漫画原作作品を手掛けるなどしていました。

サムライチャンプルー関連のNujabesおすすめ曲

battlecry

Luv(sic)でお馴染みのshing02との曲。
アニメのおしゃれなオープニングムービーと本当によく合っていて、一度観てみるとこれ以上はないんじゃないかな、と感じます。
当時のアニメは特に、なんとなく世間だと後ろ指を刺されがちなコンテンツでしたが、このオープニング曲とムービーの組み合わせは完全にその殻を破っていました。

四季ノ唄

『サムライチャンプルー』のエンディング曲。
MINMIさんの歌声も相まって、どこか懐かしく少しさみしい雰囲気の素敵な曲です。

MINMIさんのブログ*5では、四季ノ唄はそもそもNujabesのインスト曲だったのですが、MINMIさんがかなり強くそのトラックを希望したことが語られています。

参考

※1『星野源のおんがくこうろん nujabes』2024年10月25日放送, NHK Eテレ
※2wikipedia:Nujabes
※3『90年代、東京。ある若者がNujabesを名乗り、ヒットメーカーになるまで』, 2020年, 大前 至
※4Nujabesについての個人的メモ Note, 2020年3月, フクガラ
*5MINMI ~勝手に見ないでBlog~ nujabes2010年3月, MINMI

大山 悠二

31歳、独身。中学生の頃から主に現実逃避のために漫画を読んできた。詳しいジャンルは00年代の萌え系、異世界系など。

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