漫画好き必見!直近の受賞作で知る主要漫画賞まとめ【2025年最新版】
主要漫画賞5選と最新受賞作(2025年版) 漫画が「ただの娯楽」だなんて、誰が言った?
物語に心を奪われ、たった1ページで泣いて、セリフの一言に救われたことがある――そんな“あの日の読書体験”を持つ人ならきっと共感できるはず。漫画は今や、エンタメを超えて、人生や社会の断片を映し出す「文化」になっています。
そして、その価値を照らす“灯台”のような存在が、数々の漫画賞。話題性、芸術性、表現力、影響力――さまざまな視点から選ばれた受賞作たちは、今を生きる私たちにとっての「読むべき物語」と言っても過言ではありません。
この記事では、2025年春時点の最新受賞作とともに、特に注目すべき主要5賞をピックアップ。それぞれの賞が持つ背景や選考の哲学、そして、なぜその作品が“いま”選ばれたのか。受賞作の紹介を通して、あなたの心にも響く“次の1冊”を見つけてみませんか?
Highlight
- 手塚治虫文化賞― 漫画文化の「魂」に触れる賞
- このマンガがすごい!― “今”を映す、心のベストセラーガイド
- マンガ大賞 ― “今この瞬間”の面白さを、まっすぐに届ける賞
- 文化庁メディア芸術祭 マンガ部門 ― 漫画という「表現」の可能性を拓く場所
- 小学館漫画賞 ― 時代を超えて愛される“王道”に贈る、信頼の勲章
1. 手塚治虫文化賞― 漫画文化の「魂」に触れる賞
漫画が「子どもの読み物」と見なされがちだった時代に、その枠を打ち破り、「命」や「人間らしさ」の本質を描き続けた巨匠――手塚治虫。その名を冠したこの賞は、彼の精神を受け継ぎ、ただ面白いだけではない、“人の心に残る”漫画を讃えるために創設されました。主催は朝日新聞社。1997年の第1回から現在に至るまで、「マンガ大賞」「新生賞」「短編賞」「特別賞」といった部門で、漫画文化に深く根差した作品と創作者たちを顕彰しています。
この賞の魅力は、単なるエンタメ性ではなく、「生きるとは?」「人と人のつながりとは?」といった普遍的なテーマに真摯に向き合う作品が評価される点にあります。読後にじんわりと残る余韻、ページを閉じたあとに込み上げる感情……そんな“沁みる作品”が多く受賞しています。
授賞式では、受賞者一人ひとりが語る「創作への思い」が印象的で、ファンにとっても心が熱くなるひととき。手塚治虫という“原点”を感じながら、未来の漫画表現を見つめることができる、非常に意義深い賞です。
発表時期:毎年4月下旬、贈呈式は6月上旬
🏆2025年の受賞作
マンガ大賞:『1秒24コマのぼくの人生』(りんたろう)

→ アニメーションという「時間の芸術」と、人間の生き様を重ねて描いた異色の傑作。
新生賞:城戸志保『どくだみの花咲くころ』
短編賞:榎本俊二『ザ・キンクス』
→ 奇妙で不条理、だけどどこか人間臭くて笑える短編集。
2. このマンガがすごい!― “今”を映す、心のベストセラーガイド
2005年に宝島社が創刊したこのガイドブックは、毎年12月に発表される“オトコ編”と“オンナ編”の2本柱で構成されており、書店員、編集者、漫画家、評論家など幅広い業界人のアンケートをもとにランキングが決定されます。しかし、「このマンガがすごい!」は、ただのランキングではありません。
この本を開くと、その年の“心を揺さぶった物語”がずらりと並び、まるで自分の心のアンテナが今、どこを向いているのかを教えてくれるようです。
最大の魅力は、まだブレイク前の作品や新人作家が上位に食い込んでくること。
誰かの生活に静かに寄り添うような作品がランクインしていたり、言葉にならない感情を代弁してくれる漫画が1位を取っていたり。
“すごい”の定義が、売上や話題性だけではなく、「その作品に救われた」「涙が止まらなかった」「もう一度、生きようと思えた」…そんな読者の“実感”に基づいている点が、多くの漫画ファンに愛される理由でしょう。
発表時期:毎年12月中旬
🏆2025年の1位作品:
オトコ編:『君と宇宙を歩くために』泥野田犬彦

→ 記憶障害の少女と、彼女を支える少年が描く、静かで壮大な青春の物語。読後、ふっと夜空を見上げたくなる一冊。
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オンナ編:『環と周』

→ 心に痛みを抱えた大人たちが少しずつ再生していく、人間ドラマの傑作。登場人物の表情のひとつひとつが、胸に刺さる。
このランキングは、“時代の心拍数”を測るリストなのかもしれません。どんな漫画が、今の私たちにとって必要とされているのか――このランキングを通して、それを知ることができるのです。
3.マンガ大賞 ― “今この瞬間”の面白さを、まっすぐに届ける賞
もし、今一番「面白い!」と心から言える漫画を誰かに薦めるとしたら?そんな素朴でまっすぐな問いに、誠実に答えてくれるのが「マンガ大賞」です。
この賞のすごさは、選考委員がみな“マンガ好きの一般人”であること。書店員や出版関係者、漫画マニアたちが、それぞれの感性で「今、誰かに読んでほしい一冊」を持ち寄って決めるのです。そこには派手なキャッチコピーも、出版社のプッシュも関係ありません。ただただ「心を動かされたから」という理由だけで作品が評価される。だからこそ、ここで選ばれた漫画は読者にとって“宝物”になります。
発表時期:毎年3月下旬
🏆2025年 大賞作品 『ありす、宇宙までも』売野機子

→ 夢と現実のあいだを揺れながら、自分の「好き」と向き合う少女の成長譚。宇宙を目指すその姿は、どこか私たち自身の物語のようにも映る。
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4.文化庁メディア芸術祭 マンガ部門 ― 漫画という「表現」の可能性を拓く場所
「面白かった」「泣けた」だけでは語りきれない。読んだあと、静かに自分の価値観を問い直したくなるような――そんな“芸術としての漫画”に光を当てるのが、文化庁メディア芸術祭です。
1997年に始まり、映像、アート、アニメーション、そして漫画と、ジャンルの枠を超えた表現を讃えるこの祭典。中でも漫画部門は、国内外の多様な視点を受け入れる開かれた場所として、世界的にも高い評価を得ています。ここで評価されるのは、エンタメ性だけでなく、表現の奥行き、テーマの深さ、そして作品が社会に投げかけるメッセージ。その選出には、時に勇気すら感じさせるような鋭さと温かさがあります。
発表時期:毎年3月上旬
🏆2025年 マンガ部門 大賞
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『海が走るエンドロール』(たらちねジョン)

→ 定年を迎えた女性が映画の世界に飛び込み、新たな人生を歩み出す。年齢や性別の壁を超えて、「表現すること」の尊さを描いた感動作。
この賞に選ばれた作品は、静かに、でも確実に、誰かの人生を変えていく力を持っています。
5. 小学館漫画賞 ― 時代を超えて愛される“王道”に贈る、信頼の勲章
漫画が好きな人なら、きっと一度は耳にしたことがある――小学館漫画賞。その名は、長い歴史のなかで幾多の名作を讃えてきた“漫画界の老舗勲章”です。
1955年に創設されて以来、少年・少女・一般といったジャンルを越えて、幅広く人々に愛された作品たちがこの賞を受賞してきました。その選考基準は一貫して、「読者に長く愛されること」。話題性や一過性のブームではなく、心に残る“物語”と“キャラクター”が選ばれます。
この賞を受け取った作品は、すでに読者の中で「物語として生きている」のです。
🏆 第70回(2025年)受賞作品
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『これ描いて死ね』(とよ田みのる)

→ 「漫画を描くこと」に命を懸ける青年の、情熱と葛藤の物語。読む者の創作意欲すらかき立てる一作。
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『灼熱カバディ』(武蔵野創)

→ マイナースポーツ“カバディ”の熱と戦いに全身でぶつかる青春劇。
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『夏目アラタの結婚』(乃木坂太郎)

→ 殺人犯との“結婚”という奇抜なテーマの中で、人間の本質を問うサスペンス。
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『ぷにるはかわいいスライム』(まえだくん)

→ かわいいだけじゃない、“尊さ”が詰まった癒やし系ギャグマンガ。
受賞作は毎年バラエティ豊かで、まるで「いまの漫画界の縮図」。
信頼の歴史とともに、読者に寄り添い続けるこの賞は、まさに“王道”の証と言えるでしょう。
おわりに ― 漫画は、今日を生きる私たちのそばにある
漫画は、笑わせてくれるだけの存在じゃない。ときには人生の迷いに寄り添い、ときには胸の奥にしまっていた感情をそっと呼び覚ましてくれる。そして、そうした「心に残る物語たち」を選び抜いてきたのが、今回ご紹介した数々の漫画賞です。
受賞作のタイトルを眺めているだけでも、「こんな作品があったんだ」と思えるものがきっとあったはず。そしてそのどれもが、きっとあなたの今に、何かを届けてくれるはずです。
“賞を取った”という事実の先にあるのは、人の心と心がつながった証。あなたの次の「大切な1冊」との出会いのきっかけになれたなら、これ以上嬉しいことはありません。
[1]りんたろう、『1秒24コマのぼくの人生』、河出書房新社
[2]城戸志保、『どくだみの花咲くころ』、講談社
[3]榎本俊二、『ザ・キンクス』、講談社
[4]泥野田犬彦、『君と宇宙を歩くために』講談社
[5]よしながふみ、『環と周』、集英社
[6]売野機子、 『ありす、宇宙までも』小学館
[7]たらちねジョン、『海が走るエンドロール』、秋田書店
[8]とよ田みのる、『これ描いて死ね』小学館
[9]武蔵野創、『灼熱カバディ』小学館
[10]乃木坂太郎、『夏目アラタの結婚』、小学館
[11]まえだくん、『ぷにるはかわいいスライム』小学館