なろう系漫画レビュー空間『異世界落語』

 

概要

  • ゴツボ×リュウジ (著), 朱雀 新吾 (その他), 深山 フギン(その他)
  • 2016年から2020年まで小説家になろうで投稿
  • 『現代日本の文化で大活躍』パターン

 

まったり系の異世界で、血や恨みや妬みもほぼありません。
その名の通り、落語家が異世界に行くお話。
異世界×特殊技能シリーズも色々ありますが、質の高いものが多いように感じます。
今回の異世界落語も高品質。ただ、「落語を漫画の中で読まなければいけない」という落語を漫画で描くと生じる課題?も見えてきました。

レビュー

料理系異世界のように、日本人の誇りを満たしてくれる

「日本の技術でアフリカの貧しい国が救われました!」と聞いて嬉しくなる私。
そんな感情を、この漫画で沢山得ることができます。
なろう系としてしっかり優秀というわけです。

娯楽が貧弱な異世界では落語が大評判となり、みんな手を叩いて笑ってくれます。
落語の内容から着想を得て、国の問題が解決されることもあります。
この感じどこかで・・・。
そうですね、料理モノ異世界なろう系です。

料理系の異世界モノは人気ジャンルですが、異世界落語もそれとかなり似ている作品です。
「日本のモノが異世界で大絶賛」というだけではなく、落語をヒントに異世界の問題が解決される模様まで描かれている漫画のつくりも、他の料理系のストーリー展開と類似していますね。
やりつくされている料理系と被らない。
でも同じような満足感を与えられる。
とても優れていると思います。目新しくて素敵です。

落語が現地の異世界テイストに直されているのが楽しい

日本の落語の題目をアレンジして異世界で披露したりするのですが、その内容を追うのが結構楽しいです。まぁ確かにこうなるかもしれないな、という。
例えば、「時そば」は「時・チンチローネ」になります。

ゴツボ×リュウジ(著), 朱雀 新吾(その他), 深山 フギン(その他) , 『異世界落語』2話, KADOKAWA, 2018/11, p7

「時・チンチローネ」の内容は「時そば」そのままですが、案外読めます。

落語の内容って現代の漫画の内容と比べるとパンチが弱い

そもそも落語自体が、昨今の刺激的な漫画の話よりも抑えられているものなので、その点が難しいとは思いました。
異世界落語なので、どうしても落語の内容を漫画の中で描く必要があります。
今のところ有名な落語の異世界verが多いのですが、その内容は知っていたり、知らなくても大笑いするような内容ではありません。
結構長い落語パートを読んで「めちゃくちゃ感情が動いた!」ということにはならないのです。
落語ですからね。クスッとくる趣深さというか、現代の刺激を極めた娯楽と比べるのが間違っているものだと思います。
そうすると、1話のうちの大半がクスッとレベルの異世界落語に割かれることになるわけです。
「うまい」の一言で終わる料理漫画とは違い、落語漫画の少し大変なところですね。
今後、「読者も引き込むような面白い落語」もしくは「落語とストーリーをうまく絡める進行」のどちらかが必要になってくると思います。

 

大山 悠二

31歳、独身。中学生の頃から主に現実逃避のために漫画を読んできた。詳しいジャンルは00年代の萌え系、異世界系など。

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