【マンガ大賞2025】ノミネート作品ピックアップ!第2弾

書店員を中心とした各界のマンガ好きの選考員が「今もっとも面白いマンガ」を選ぶマンガ大賞。 大賞候補となるノミネート作品には、今年も話題作・人気作が数多く選出されています。

前回の記事で紹介出来なかった2次ノミネート作品から3作品を紹介します。


Highlights

  1. 『ふつうの軽音部』
  2. 『どくだみの花咲くころ』
  3. 『路傍のフジイ』

『ふつうの軽音部』

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ついにこの日が来た!!今日!!私は!!エレキギターを買う!!!

なぜなら軽音楽部に入りたいと思っているから!!

ちょっと渋めの邦ロックを愛する新高校1年生・鳩野ちひろは、初心者ながらも憧れのギターを手に入れ、念願の軽音部に入部する。個性豊かな部員たちに困惑しつつも、バンドを結成することになるが──!?

そんな主人公 鳩野ちひろの一言から始まる本作は、超等身大のむきだし青春&音楽奮闘ドラマです。

渋めの邦ロックを愛する高校一年生のちひろは過去の経験から、自分の歌声にコンプレックスを抱えながらも、ひょんなことから軽音部に入部します。そこには、陽キャで明るい内田桃や、自身とバンドを組みたいという幸山という同級生がいました。ちひろは、個性豊かな部員たちと出会い、音楽を通して成長していく姿が描かれます。

共感度の高さも話題の本作を一言で表すなら、「等身大の青春」という言葉がピッタリでしょう。高校生のリアルな悩みや葛藤、喜びや成長がその場にいるような温かみを持って表現されています。

また、作品のテーマである音楽への熱い情熱も作品全体に溢れています。主人公たちが奏でる音楽、特に、ちひろが視聴覚室でロックバンドandymoriの「evetything is my guitar」を歌うシーンは読者の心に響くこと間違いなしです。

さらに、作品のメリハリも魅力の一つで、クスッと笑えるようなギャグ要素も盛り込まれており、シリアスな展開だけでなく、明るい雰囲気のゆるさも楽しめます。

彼女たちは、楽器の練習に苦労したり、バンドメンバーと意見が衝突したり、ライブで失敗したり…。音楽を通してぶつかり合い、支え合いながら、少しずつ成長していきます。その姿は、音楽を奏でる楽しさだけでなく、青春の尊さを教えてくれるような奥深さがあります。音楽経験者に限らず多くの読者がこの作品に魅了されるのは、一人一人の青春を思い起こさせるような魅力があるからに違いありません。


『どくだみの花咲くころ』

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読めばきっと、心が軽くなる。『どくだみの花咲くころ』の魅力を紹介します。

予測不能な少年・信楽と、優等生の清水。 一見、全く接点のない二人が織りなす、不器用で愛おしい友情の物語。

舞台は、とある田舎の小学校。優等生の清水は、クラスでも浮いた存在である、癇癪持ちの信楽に興味を抱きます。図工の時間に、信楽の独創的な作品を目にしたことがきっかけでした。またある日、清水は信楽が空き地で草人形を作っているのを目撃します。その人形は、清水の心を強く惹きつけ、それをきっかけに、二人の間には不思議な絆が生まれていきます。

『どくだみの花咲くころ』の魅力は、何と言っても、信楽というキャラクターです。感情のままに行動する信楽は、周りからは浮いた存在に見えます。しかし、彼の行動には、純粋で優しい心が隠されています。清水は、そんな信楽の魅力に気づいていきます。また、清水の心の変化も、本作の大きな魅力です。優等生として生きてきた清水は、信楽との出会いを きっかけに、自分自身を見つめ直していきます。

「周りの目を気にするよりも、自分の気持ちに正直に生きてもいいのかもしれない」

そんな風に思わせてくれるこの作品には以下の3つのポイントがあります!

・心が温まる: 優しい気持ちになりたい時に、ぜひ読んでほしい作品です。

・癒される: 信楽の純粋さに、きっと癒されるでしょう。

・考えさせられる: 自分自身の生き方について、考えさせられるかもしれません。

「信楽くんのことが大好きになりました!」「清水くんの気持ち、すごくよく分かります」「読み終わった後、心が温かくなりました」このような読後感を味わうことのできる優しさと温かさに溢れた作品となっています。

ぜひ一度、信楽と清水の織りなす、愛おしい物語を体験してみてください。きっと、あなたの心にも、温かい花が咲くはずです。きっと、あなたにとって特別な一冊になるはずです。


『路傍のフジイ』

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「次にくるマンガ大賞2024」にもノミネートされ、各所で絶賛の声が上がっている漫画『路傍のフジイ』。本作は、一見平凡な男・藤井の日常を描きながらも、読者の心を鷲掴みにする奥深い作品です。

職場では目立たない地味な中年男性。仕事はちゃんとするけれど、職場飲みにはそもそも声がかからない。後輩たちに(ああはなりたくないな…)と思われてそうな男、それが「藤井」…しかし、ごく普通の彼の生き方は、私たちの想像を超えていきます。

自分の感情に正直に、やりたいことをやり、欲しいものを手に入れる。そんな彼の姿は、時に滑稽に、時に羨ましく、そして時に感動的に映ります。その裏には彼自身の何者にも縛られない自由で愚直な姿勢が、現代社会のしがらみに縛れる私たちにはない何かを感じるからでしょう。「どんな育ち方してきたんだ?」「友達や彼女はいるの?」「休日は何してんだ?」と言葉にしづらい感覚を鮮やかに切り取る、幻惑のヒューマンドラマになっています。

この作品の魅力について、もう少し深掘りをしてみましょう。

1、等身大の主人公

藤井は、決してヒーローではありません。むしろ、どこにでもいるような、ごく普通の男です。

・仕事に不満を抱えながらも、毎日を淡々と過ごしている。

・周囲の目を気にしながらも、自分のペースを崩さない。

・悩みや不安を抱えながらも、それと向き合おうとしている。

そんな藤井の姿は、読者の私たち自身の姿と重なり、共感を覚えます。

2、日常の小さな幸せ

『路傍のフジイ』には、派手な事件やドラマはありません。描かれているのは、藤井の何気ない日常です。公園で猫と戯れたり、コンビニで買ったお弁当を美味しそうに食べたり、好きな音楽を聴きながら散歩したり。そんなささやかな出来事の中に、藤井は喜びや幸せを見出しています。藤井の日常を通して、自分自身の周りにある小さな幸せに気づかされます。

3、優しい視点

作者の鍋倉夫先生は、藤井だけでなく、周囲の人々にも優しい視線を向けています。

・同僚の田中は、藤井との交流を通して、自分の生き方を見つめ直します。

・職場の仲間たちは、藤井の優しさに触れ、少しずつ心を開いていきます。

登場人物たちは、それぞれ悩みや問題を抱えながらも、互いを尊重し、支え合って生きています。そんな彼らの姿は、読者の心を温かくします。

4、考えさせられるテーマ

『路傍のフジイ』は、読者に様々なことを考えさせます。幸せとは何か?自分らしく生きるとはどういうことか?人との繋がりとは何か?

『路傍のフジイ』の魅力は、その独特な世界観だけではありません。作中に散りばめられた、藤井の言葉一つ一つが、読者の心に深く響きます。「別に、人に認められなくてもいい」、「自分が幸せなら、それでいい」そんな彼の言葉の数々は、私たちに生きるヒントを与えてくれます。

「藤井の生き方に憧れる」「自分も藤井みたいに生きたい」共感の声が多数寄せられており、その人気はますます拡大しています。『路傍のフジイ』は、あなたにとって、忘れられない作品となるでしょう。ぜひ、手に取って、藤井の生き様を目撃してください。彼の生き方は、きっとあなたの価値観を揺さぶり、新たな発見をもたらしてくれるはずです。


どの作品が大賞を取ってもおかしくない今年のマンガ大賞

特集記事の第1弾、第3弾も是非ご参照ください!


[1]原作:クワハリ・作画:出内テツオ、『ふつうの軽音部』、集英社、〈少年ジャンプ+〉

[2]城戸志保、『どくだみの咲くころ』、講談社、〈アフタヌーンコミックス〉

[3]鍋倉夫、『路傍のフジイ』、小学館、〈ビッグコミックス〉

まよまよ

新潟出身の漫画中毒めがね。コアでニッチな漫画が割と好き。猫と暮らす。

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