なろう系漫画レビュー空間『異世界の沙汰は社畜次第』
概要
- 采 和輝 (著), 八月 八 (原著), 大橋キッカ (デザイン)
- 女性向け(BL含む)
- 『社畜が転生して現代の社会人スキルで改革する』パターン
全年齢BLな原作なろうのコミカライズです。
2019年に書籍化、2020年からコミカライズされ、コミックは2022年12月現在3巻まで出ています。
BLであることを知らずに読んで途中で力尽き、2巻の途中まで読んでの感想になります。
感想
絵が十分綺麗
量産型なろう系にありがちなクオリティ低めの低エネルギー絵ではなく、しっかり綺麗な絵でかかれている作品です。
漫画を担当している采 和輝先生は2014年からナツメ-natsume-、iRODORi名義のサークルで同人活動されている方のようです。
絵柄は女性向け寄りではありますが、男性の私が読んでいても「絵が上手で上質だな」と感じるレベル。
BLな展開になるまでは「これは当たりなろう系だな」と思いながら読んでいました(当たりなんだろうけど、私は男性なので)。
ただ、言われてみれば確かに男性キャラクターの絵がとても上手ですね。イケメンだし、性格ごとに上手に書き分けられています。
異世界での無双が抑えめでリアル
女性向けなろう系の特徴で、男性向けに比べて活躍が控えめで、周りの人との交流やつながりに充填が置かれる傾向があります。
この作品も、「転生した先の世界の経理課で働く」「現代の優れた業務スキルで課の中から改善を行う」という抑えめの内容になっています。
男性向けの超無双&ハーレムと比べると現実感が出て読んでいて胸焼けしません。
かといって、活躍しないわけでもなく、塩梅が丁度よい内容になっています。
強いて言えば、世界設定をもう少し詰めてほしい感じはしました。
国の予算がヤバい状態ということを説明する内容が少々苦しい感じがしたので、それっぽさはもう少しほしかったですね。
(男性目線で)女性向けなろう系が興味深かった
聖女として異世界に召喚される現代人女性に巻き込まれる形で異世界に送り込まれる主人公(男)。
ここまでは男性向けでもありがちな設定なのですが、今作はBLな女性向け作品。
やはり男性向けと女性向けで異なる部分があります。
「なるほど、女性読者ターゲットに都合が良い心地よい世界を作るとこうなるのか」
というとても興味深い学びを得ることができました。
- 主人公が国を救うような大活躍をしない : 受けの男主人公の話で女性主人公での話ではありませんが、自分ができる範囲のしごとで活躍します
- 主人公が経理課 : (偏見かもしれませんが)女性のオフィスワークの代表として想定しやすい仕事内容にしているのでは
- 職場が温かい : 同じ部屋で働く同僚に嫌な奴がおらず、みんな優しくしてくれる描写が含まれますが、男性向けだと同僚など関係なく無双しがちですよね
- 八方美人系の若い女性がヒスる : 男性向けでは、「オラオラ系粗暴な先輩冒険が調子こいて死ぬ」に該当すると思いますが、男性向けで必ずヒロインになりそうな立ち位置の女性の精神的な幼さが強調されていたり、異世界でうまく渡り歩けないような描写が出てきたりするギャップに驚きます
- 自分が何をしたかよりも、どんな気持ちで行っているかを重視 : 男性向けは「未踏のダンジョンをクリアーした」ことが大事なのですが、「自分が身を粉にしてorXXな気持ちで仕事をしている」という、過程にコマを多く割いていると感じました(作品にも依ると思いますが)
- エロ設定は男性向けと似てる : 「病気を治すために性的に交わらなければ!!」というご都合主義設定、BLにもあるんですね
18禁ではないものの、「主人公の体調不良を治すためにBLなチョメチョメをしなければ!」という結構直接的な治療法が出てきたこともあり流し読みになりましたが、なんだか勉強になりました。
男性が女性向けなろう系を10冊読めば、女性心がわかるようになる、とかあるような気がします。
モテるためには女性向けなろうを10作品読め!!
総評:BL好きな女性であれば読んで見る価値があると思います
絵もきれい、なろう要素も丁寧にかかれていて胸焼けしない、上質ななろう系漫画です。
あとはBLの趣味が合うか合わないかだと思います。(多分、男性向けと同じように個々人の性癖的な部分があると思うので)
2巻で力尽きたので言えることは少ないですが、個人的には勉強になりました。読んで見るものです。