夏休みよ!終わらないでくれ!『8月31日のロングサマー』

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『8月31日のロングサマー」は、伊藤一角先生による青春タイムループラブコメディ漫画です。

主人公の男子高生・鈴木くんは、夏休み最終日の8月31日を何度も繰り返すタイムループに閉じ込められてしまいます。そんな中、同じくループに巻き込まれているヒロインの女子高生・高木さんと出会い、2人は協力してループからの脱出を試みることで物語は展開していきます。

高校2年の夏休み最後の1日…「明日にならなければいいのに」と誰しもが一度は思ったことがあるのでは無いでしょうか。そんな若き日の妄想を具現化したような本作ですが、記憶を失わないまま永遠にループすることになったらあなたはどうするでしょうか。鈴木くん、高木さんの2人だけはリセットされた記憶が引き継がれますが、日付が変わる深夜0時に環境はいったんリセットされます。同じ境遇に置かれた2人は脱出に向けて協力するうち、次第に互いを知り親密になっていきます。


作品の魅力:

  • タイムループ×青春ラブコメ:
    • タイムループというSF要素と、高校生の甘酸っぱい恋愛模様が絶妙に組み合わさっています。同じ日が繰り返される中で2人だけが記憶を持ち越し、2人の関係性が徐々に変化していく様子が丁寧に描かれております。海や学校のプールなど、こんな青春、理想やんけ!と思いながらも、リセットされてしまう切なさも孕むことで、より青春の儚さに拍車がかかるようなストーリーになっています。
  • 個性的なキャラクター:
    • 恋愛経験のない真っ直ぐな性格の鈴木くんと、クールで少しミステリアスな雰囲気を持つヒロイン高木さん。2人の掛け合いはコミカルで、読んでいて飽きることがありません。鈴木くんの女子に免疫がなく初心な反応や、絶望的にファッションセンスがない点など、彼の日常を追うだけでもツッコミどころ満載で面白いのですが、鈴木くんをそれとなくリードする少し大人びた高木さんとの掛け合いが化学反応を起こし、面白さを倍増させます。
  • 魅力的なストーリー展開:
    • タイムループの原因や脱出方法など、謎が散りばめられたストーリーは、読者の好奇心を刺激します。各話ごとに異なる展開が用意されており、タイムループものと侮ってはいけません。お互いを理解したり、ときにハレーションを起こしたりしながら少しずつ心を通わせていく、ゆっくりとした時間の流れがなんとも言えない情緒となって、作品の魅力を深めます。
  • 読者の心を掴む要素:
    • タイムループという日常ではありえない事が起きるからこそ、日常の尊さや大切さを感じる事ができます。永遠に続くかのような夏休み最終日を繰り返す2人の関係は、もどかしくもどきどきする感情が湧き上がってきます。ループからの脱出方法を探す中で少しずつ近づく二人の関係は、応援したくなること間違いなしです。

『8月31日のロングサマー』は、読者を飽きさせない魅力的な作品です。ぜひ手に取って、2人の織りなす青春ラブコメディを楽しんでみてください。


[1]伊藤一角、8月31日のロングサマー、講談社、(モーニングコミックス)

まよまよ

新潟出身の漫画中毒めがね。コアでニッチな漫画が割と好き。猫と暮らす。

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