なろう系漫画レビュー空間『異世界ナンパ〜無職ひきこもりのオレがスキルを駆使して猫人間や深宇宙ドラゴンに声をかけてみました〜』
概要
- 滝本 竜彦 (原著), みやけ りく (著), 久水 あるた (イラスト)
- 2019年から小説家になろうで投稿中
- 『謎スキルで異世界転生』パターン
題名の長さがなろうらしくて良いですね。
まずは題名を心の中で反芻して味わうのが、なろう系の作法だと思っています。
内容は、「一言声をかえれば女の子即落ち!」という話ではない点で、かなり裏切られました。
案外、読めます。
レビュー
広場で顔が挙げられない状態からのスタート
題名だけ読むと、エロ漫画もどきのような展開まで想像できてしまいますが、
題名の割に、「女の子即落ち2コマ」的な展開から始まりません。
むしろ、広場で顔をあげるところからスタートします。
ナンパのスキル自体もはじめからあるわけではなく、
「現実世界ではコミュ障だったのが、異世界に行って最低限人間レベルになった」という状態からのスタート。
エロ漫画的な話ではなく、ここから普通に頑張って人に声をかけられるように努力したりするのです。
コミュ障の描写がリアル
多分、作者はコミュ障寄りの方なのではないかと思います。マンガ担当の方も、コミュ障をよく理解している方だと思います。
なろう系なので、色々なイベントが結構な速度で進むのですが、その中でページを多く割かれて描かれているのが、
「コミュ障が頑張って声をかけようとするけど、できない」シーン。
頑張って声をかけようとするけど、色々考えているうちに気力ゲージが減っていく際の感覚など、リアルですね。
コミュ障だと、場面や感情がすごいスルッと入ってくる。
内容がかぶる異世界なろう系ながら、しっかり尖っていて作者の強みが出ていてとても良いと思いました。
かと思うと結構適当な展開も多い
異世界なろう系の中でも色物系の題名なので、そもそもかっちりとした設定などは微塵も期待していないのです。
だから別にいいのですが、陰キャの過去のトラウマ描写やナンパするまでの躓き具合のリアルな描写に比べ、あらが目立つ部分が出てきます。
「なんとなく描いた歌詞でみんな感動してくれる」という場面。
確かに憧れるシチュエーションではあるけど、さすがにちょっとこっぱずかしくなる。私だけ?
リアルでなくても良いので、もうちょいリアルに、飲み込みやすく加工していただきたい。
こういう部分を探して茶々入れるのも、なろう系の楽しみではありますが。
話のテンポやキャラクターの登場頻度などがちょうどよい
なんか読めます。
なろう系漫画の中には、テンポが早すぎて入っていけないものや、設定に無理がありすぎて感情移入できないもの、何故かイライラするものなどございます。
しかし、この作品はなんか読める。この時点でなろう系漫画の中では質が結構高いと思います。
「コミュ障が声かけられないところからナンパを頑張る」という尖ったオリジナルな部分があるからなのか、コミュ障の私が主人公に共感したからなのかわかりませんが。。。
話のテンポも早すぎず、登場人物の増え方も読んでいて疲れるということはありません。
自分の弱みから新しいものを作るというよい教訓
今回の件から我々が得るべき教訓は、
「自分の弱みをつかって新しいものつくろう」
ということです。
御存知の通り、異世界なろう系を書こうと思っても、まず他の人と9割9分かぶります。
かわいいエルフ、ロリ系のサブヒロイン、お供は懐いて犬化したフェンリル。
そこから自分の中からオリジナルを添えなければいけないわけですが、
「すごい得意なこと」「すごい詳しいこと」「人と違った経験」など、なかなかないと思います。
しかしながら、「自分の弱いところ」は実はたくさんあるし分かる。それを添えれば良い!
その結果できたのがこの作品だと思っております。
異世界なろう系、コミュ障あるあるを添えて・・・、的な。
加えて、なろう系を読む人種はだいたいコミュ障でしょう。多分。
コミュ障あるあるを、コミュ障が多いと思われるマーケットに投下したという点でとても素晴らしい作品です。
最低でもコミカライズまでは約束された勝利の発想ですね。