2025年7月TVアニメ2期決定『ダンダダン』の魅力に迫る

ジャンプ+にて連載中の『ダンダダン』(龍幸伸・著)は、幽霊や宇宙人といったオカルト的題材を軸に、青春ドラマ、超常バトル、さらにはラブコメ要素までを融合させた、極めてユニークな構成を持つ少年漫画です。
一見すると奇抜にも思える題材の組み合わせですが、作者の卓越した画力と演出力、そしてキャラクター造形の妙によって、物語は高い説得力と没入感を伴って展開されています。
TVアニメ第1期は2024年10月から12月に放送されたました。Creepy Nutsがオープニングを務めたことでも話題を呼び、第2期も2025年7月から放送が決定。
物語の幕開け──「信仰の相違」が生む非日常
物語は、霊媒師の家系に生まれた女子高生・綾瀬桃と、宇宙人の存在を信じるオカルトマニアの男子高校生・高倉健(通称:オカルン)の出会いから始まります。

互いに自分の信じる超常存在を否定し合う二人は、その主張を証明すべく、桃はUFO目撃情報のある廃病院へ、オカルンは心霊現象が噂されるトンネルへと足を運びます。

そこで彼らが直面するのは、まぎれもない“本物”の怪異──。 この体験を境に、二人は否応なく日常の外側、すなわち異形の存在が蠢く「非日常」へと踏み出していきます。
圧倒的な画力と演出力──視覚で語る説得力
作者・龍幸伸先生は、『チェンソーマン』のアシスタント経験を経て頭角を現した新鋭であり、本作でもその非凡な描画力が遺憾なく発揮されています。

特に戦闘シーンにおけるスピード感と迫力、異形の存在の不気味さを併せ持った造形、そしてキャラクターの感情を繊細に表現するタッチは、ページをめくる手を止めさせない力を持ちます。
また、背景美術に至るまで緻密に描き込まれており、作品の持つオカルティックな世界観を一層際立たせています。
多層的なテーマ構造──ジャンルを越境する物語
『ダンダダン』の魅力は、単なるオカルトバトルに留まらず、友情、家族、恋愛、社会構造への違和感といった、現代的かつ普遍的なテーマを内包している点です。
学園を舞台としたカースト構造への言及、呪いと超能力の覚醒、時間軸を越えた因果の交錯など、多彩なモチーフを大胆に取り込みながらも、物語の芯を見失うことがない点は特筆に値します。
一見雑多に見える要素の数々が、作品世界の中で確かな統一感を持って融合おり、それはすなわち、作家の世界構築力の高さに他なりません。
登場人物たちの人間味──ドラマに深みを与える個性
中心人物であるオカルンと桃の二人は、互いに正反対の性格でありながら、次第に信頼と友情、そして微かな恋情を育んでいきます。その関係性の変化が、バトルや怪異との対峙を通して自然に描かれている点が、本作のドラマ性を支えています。

また、愛羅やジジ、ターボババアといったサブキャラクターにも厚みがあり、それぞれの背景や信念が物語に深みとリアリティを与えます。彼らの行動原理にしっかりと説得力があることで、バトルは単なる力のぶつかり合いではなく、感情の交錯として読者に迫ってきます。
緻密な構成と豊かな演出──“読ませる”エンタメとしての完成度
物語のテンポは軽快でありながら、伏線の張り方や回収の精度も高く、単行本での一気読みはもちろん、連載を追う楽しさも兼ね備えている。ギャグやコメディ要素も巧みに挟まれており、緊張と緩和のバランスが非常に優れている点も見逃せません。
また、個性的なクリーチャーデザインや、緻密な美術表現、SF的要素を含んだスケールの大きな展開など、視覚的にも知的にも刺激の多い作品に仕上がっています。
新たな時代の“怪異譚”として
『ダンダダン』は、ジャンルを横断する柔軟な物語構造と、作者の高度な演出力、そして魅力的なキャラクター群によって、従来の少年漫画の枠組みを一歩拡張する作品となっています。
幽霊と宇宙人、呪いと超能力という異なる超常要素を自然に共存させながら、その中で“人間”を描くことを忘れないこの物語は、まさに現代における新たな“怪異譚”の傑作という言葉がぴったりな作品!
まだ本作を手に取ったことのない読者は、ぜひこの機会に『ダンダダン』の世界に足を踏み入れてみてほしい!そこには、想像を遥かに超えたエンターテインメントが待っています。
[1-5]龍幸伸、『ダンダダン』、 集英社、〈ジャンプ・コミックス〉