『サテライト・コインランドリー』第2巻発売記念!特別インタビュー!!

“心が洗われる日常系SFファンタジー”として人気上昇中の『サテライト・コインランドリー』の第2巻が本日発売!新進気鋭の漫画家コンビ「にわかあめ」先生へのインタビューの模様をお届けします。


感性に惹かれてコンビを結成

――この度は第2巻の発売おめでとうございます!

よよはちナツノアメ:ありがとうございます!!

――『サテライト・コインランドリー(以下「サテコイ」という)』は、原作担当のナツノアメ先生と作画担当のよよはち先生から成る、にわかあめ先生の作品ですが、コンビ結成のきっかけを教えていただけますか?

ナツノアメ:元々、お互い知り合いではなかったんです。私は漫画の絵が描けないので、原作をやりたいと思って漫画の勉強をしていたときに、漫画業界にツテがある知人がちょうど原作者を探している絵が描ける人がいるって教えてくれて知り合いました。私のネームを共有して、よよはちさんの絵を見せていただいて、すごい好きだなと思いました。ぜひ一緒にやりたいですとお会いして、お互い好きな作品が同じだったこともあり、2021年にコンビを組みました。

――好きな作品が同じということは、お2人の感性が合っているんですね。

よよはち:そうですね。打ち合わせをしていても、「これ好き!」ってナツノさんが言ってくれたら「私もそれ好きです!」って感じで、そんなに齟齬がないですね。

――ちなみに、お2人が共通で好きな作品って何だったんですか?

よよはちナツノアメ『少女終末旅行』です!

取材中も息ピッタリのお2人(左:ナツノアメ先生 / 右:よよはち先生)

 


煌めく発想で心を照らす

――サテコイはどのような経緯で誕生したのでしょうか?

よよはち:ナツノさんがまず企画を見せてくれて、それが土台になっています。

ナツノアメ:よよはちさんに幾つかお見せした中の1つですね。

――候補はどれも近い種類の作品でしたか?

ナツノアメ:少し不思議で、SFの何か日常ものをやりたいと思っていました。夜、犬の散歩をしてるときに、コインランドリーが光ってるのを見て、なんだか宇宙みたいだなって思ったのがサテコイ誕生のきっかけです。当時はコロナウイルスが流行していて、読んだ人の気持ちが明るくなるような作品にしたい、心が温かくなるような作品がいいなって思いました。その方向性のまま、毎晩出てくる星を見たときに思い出してもらえる宇宙をテーマにしました。

――よよはちさんも候補の中ではこれだって感じでしたか?

よよはち:全部好きだったんですけど、宇宙でコインランドリーって発想が私にはなかったので、すごいと思いました!

宇宙鯨が遊泳する優々たるシーン [にわかあめ(よよはち×ナツノアメ), サテライト・コインランドリー(1), KADOKAWA, 2023, p.136-137]

 


時流に乗って実力で運を掴む

――アイディア開発から出版まで、険しい道のりかと思いますが、サテコイはいかがですか?

ナツノアメ:幸運なパターンだと思っていて、最初、よよはちさんのツイッター(現X)でプチバズリしました。

よよはち:そうですね。数万件のリアクションをいただきました。

――エピソード単位で投稿されたんですか?

よよはち:1話の前半くらいです。ありがたいことに、すごい評価が良かったです(笑)。

ナツノアメ:そのときにKADOKAWAの編集者さんから連絡をいただきました。

よよはち:たまたまですよね、本当に(笑)。

ナツノアメ:今まで幾つか出版社の編集者さん達とやり取りしましたが、大体最初の案がそのまま通ることはなくて、すごい直しが入るんですよ。サテコイの場合は、その編集者さんが「このままの雰囲気が好き」って言ってくれて、それをそのまま形にできた本当にラッキーなパターンだと思います。

いいね数3万越えで話題になった投稿(よよはち先生公式Xアカウントより)

 


論理的思考とデザインの調和

――普段はどのようにお2人で作品を作られているのでしょうか?

ナツノアメ:私が土台の部分をネーム(簡単な絵とセリフ)でお渡しして、よよはちさんがリネームという形で、さらに漫画に近いものにして作画が形になっていきます。

――1つのエピソードにどれくらい制作期間がかかるのでしょうか?

ナツノアメ:まちまちですが、1個のネームを書くのに、大体2週間ぐらいですかね。ただ、直しがすごい時などはもっとかかってます。長い時は1ヶ月。

よよはち:作画は大体2週間以内に納めるようにしています。

――物語はいつもどのように考えられているのでしょうか?

ナツノアメ:各巻、こういう話でいきましょうっていうのは最初に編集者さんと流れを決めておきます。大体その通りにいかないんですけど(笑)。大事にしていることは、この話は何の話なのかっていうのを一言で書くこと。例えば2巻の最初の話だと、「不眠症の恐竜の宇宙人が毛布を洗いに来て、すっきりする話」みたいに、いかにシンプルにするかっていうのから始めて、プロットという形で文章に起こして、何ページ目にどういう展開が来るのかを考え、そこからセリフを1つずつ考えていって、ネームにするといった作業です。ある種のパズルみたいですね。


優しい世界へのこだわり

――キャラクターやストーリー全体を通して、描き方で意識されてることはありますか?

よよはち:私もナツノさんと同じく、優しい世界が好きなので、キャラクターはみんな完全に善人じゃないけど、優しい気持ちが絶対にあるような子にしたいなと思っています。デザイン的な面で言うと、柔らかい感じというか、丸い感じが好きなので結構まるまるした子が多いかもしれないです(笑)。

――世界観を作る上で、すごく大事なことですね。

よよはち:あとは、女の子とか男の子とか性別がハッキリ決まっているというよりは、性別不詳みたいなキャラクターが個人的に好きなので、それが反映されているかもしれないですね。

ナツノアメ:みんな中性的だよね。あと、私のネームって紙を3段組で区切っているだけで、コマ割りや構図はよよはちさんに考えていただいているんですよ。そこのこだわりとかありますか?

よよはち:何ですかね、、未だにすごい難しいなと(笑)。他の漫画を読みながらこうなってるんだみたいな感じで、参考にしながら、取り組んでますね。

スタッフ持参の単行本に愛らしいキャラクターを描いていただきました!

 


空想力の源は児童文学

――ご自身が影響を受けた作品はありますか?

ナツノアメ:サテコイに限らず、自分がなぜ物語を書きたいかという点では、幼少期にずっとファンタジーの本を読んでいたことに遡ります。『ハリー・ポッター』『ダレン・シャン』『デルトラ・クエスト』など、児童文学がすごく流行っていた時期に、毎晩、遅くまでずっと読んでいました。そのときに自分の想像力や空想力が育ったと思っていて、当時は自分でもそういう話を書いてみたいなっていうので、空飛ぶ島とか、そういう物語をノートにいっぱい書いていたんですよ。振り返ると昔読んだ児童文学が、自分の中の想像力の源にあるのかなって思います。それから、『ジュラシック・パーク』や『E.T.』など、スピルバーグ監督の作品が私の中でブームが来ました。ファンタジーで培った空想力と、映画からもらったSFへの憧れが合わさったのかな。

――大人になってからインパクトを受けるのもあると思いますが、やはり小さい頃に触れたものの影響力って大きいんですね。よよはちさんはどうですか?

よよはち:私も幼少期、とても本が大好きでした。結構ませた子供だったので、大人向けのハードカバーの本とかもよく読んでいました(笑)。宮沢賢治さんの作品やミヒャエル・エンデさんの『モモ』や『果てしない物語』が特に好きでした。私は絵を描くのが好きだったんですけど、昔は小説を書く方が好きで、ずっとワードなどで物語を書いている感じの子供でした。小学生の時はそうやって過ごしていたんですけど、中学生の頃に、オタクブームみたいなのがワーッて来ました。それから一気にラノベやアニメにハマって、漫画はそんなに読まなかったんですけどアニメが本当に好きだったので、色んな作品を観て、今に至るという感じですね。

――アニメは当時何を観ていたんですか?

よよはち:なんだろう、、まどマギとかですね。2010年くらいにすごい観ていました。

――他に好きなアニメはありますか?

よよはち:たくさんあるんですけど、最近1番好きなのは『聲の形』です。原作は漫画ですけど、アニメが本当に好きで、ずっと観てます。

――『聲の形』は本当に胸に刺さる作品ですよね!


好きな漫画を3つ選ぶなら

――私たちの漫画レビューサイト「ComicAddict」は自分が好きな漫画をピックアップして、人に紹介できるって機能があるんですけど、今まで読んだ中で好きな作品を3つ選ぶってなったら何を選択されますか?

ナツノアメ:どうしよう、、よよはちさん、お先にどうぞ(笑)

よよはち:特に好きなのは『よつばと!』です。大学時代におすすめされて、読んでみたら本当にどハマりして、こんな面白い漫画は他にないんじゃないかっていうくらいの衝撃がありました。

――あの優しい世界観がたまらないですよね。それでは、ナツノさん、どうでしょうか?

ナツノアメ:わたしは『火の鳥』。この作品はちょっと外せないですかね。

――まさに殿堂入りの作品ですね。原作者目線で、やはり物語がすごいのでしょうか?

ナツノアメ:はい。あの時代に、あれだけのSFを描くのがすごいですね。マルチバース的な要素もあって、本当にすごいです。

――それでは、よよはちさんにボールを戻して、2つ目を教えてください。

よよはち:そうですね、2つ目は『ARIA』かな。優しい世界の作品なんですけど、漫画を描く上でも、コマ割りなどを参考にしてます。

――『ARIA』は描き込みがすごい印象ですが、作画の観点から思うことはありますか?

よよはち:私だったら、毎月1回あれはちょっと厳しいかな。構図など、大画面で出す絵がすごいので、参考にしたいなという感じです。

――ナツノさん、戻ってきました。それでは2つ目をどうぞ!

ナツノアメ:色々と迷いますが、坂月さかな先生の『星旅少年』。本屋さんで見て、こんなに衝撃を受けた作品はないっていうぐらい全てが刺さりました。絵も世界観も本当にすごいんですけど、扱ってるテーマが優しい世界だけど、サテコイの優しい世界とは違う、寂しさの漂う優しい世界っていう、坂月先生にしか出せない深さがすごい好きです。夜中、寝る前に部屋を真っ暗にして読みたい作品です。

――心に沁みる、とても雰囲気が良い作品ですよね。

ナツノアメ:はい、その世界に入りたいなって思う素敵な作品です。

――それではよよはちさん、最後の1つを教えてください。

よよはち『少女終末旅行』って言いたいんですけど、冒頭で言ってしまいましたね(笑)。一旦そっちは置いておくと、『ヨコハマ買い出し紀行』がすごい好きです。サテコイが影響を受けた作品でもあるということで、おすすめです。

――(その場にいたスタッフが大きく頷く)

――ナツノさんも最後の1つをお願いします!

ナツノアメ:今まで出た漫画とは少し違いますが、『動物のお医者さん』も大好きです。ギャグセンスがすごい好きで、あれだけリアルで写実的な作品なのに、とても人間同士の会話が面白くて、動物もかわいくて、ずっと読んでいました。あれこそ、本当に優しい世界だなって思います。

――こちらも唯一無二の世界観で、笑いのセンスがたまらないですよね。

ナツノアメ:本当にそう。掛け合いとか、ツッコミの一言とか、唯一無二感がとにかく好きです。あの作品の面白さって、すごい綿密な取材の上で成り立ってるバランスだなと思っていて、読むと獣医さんになりたくなります(笑)。


全ての想いを込めた作品

――サテコイを特に読んで欲しい人はいますか?

ナツノアメ:私がもし何かで亡くなったときに、伝えたい内容を全て込めている作品です。だから、もちろん親しい人たちに読んでもらいたいけど、小さい子供にも読んで欲しいです。私のメッセージを受け取れっていう押し付けのつもりは全くないのですが、生きてる上で、私が大事だなって感じてることを全てのお話に入れてるので、やっぱり若い子や子供にも読んでもらえたら嬉しいなって。

――作品にかける想いが心に染み入ります。よよはちさんはいかがでしょうか?

よよはち:私もナツノさんと概ね一緒で、本当に小さな子にも読んでほしいっていう想いから、わかりやすく漫画を作っています。それこそ、『アンパンマン』や『おじゃる丸』みたいなテイストの作品作りを意識をしているので、できたら幼稚園生とか小学生にも読んでもらえるとすごい嬉しいです。

――お子さんのいる方は、親子で一緒に読みたい作品ですね。将来のアニメ化にも期待大です!


長く愛される作品づくり

――それでは、今後の目標や野望を教えてください。

よよはち:まずは、にわかあめとして長く作品作りができたらいいなと思っています。サテコイを続けるのはもちろん、新企画を通して、また別の作品を描いて続けるっていうのもやっていきたいなと思います。

ナツノアメ:まだ一作目ですので、どれだけ続けていけるかっていうのが一番大事ですね。あと、私は会社員としてフルタイムで働きながらやっているので、いろんな経験をしていて本当は創作活動をやりたいけど、やれていないという人たちに対して、こういう働き方もあるんだよっていうのを伝えて、そういう社会人が創作をするっていうところに貢献できるといいなって思っています。


読者・関係者に心から感謝

――最後に、新刊を心待ちにしていたファンの方々に一言お願いします。

ナツノアメ:どうしても書けないときがあって、そういうときに頂いたメッセージやファンアートを見て、力をもらっています。読んでくださる方がいて続けられていることだなって思っています。本当に感謝の気持ちでいっぱいです!

よよはち:ファンの方や担当の方など、多くの人に支えられて、この一冊ができてるんだって思いでいっぱいなので、その期待に応えられるように、割と真面目に魂削って描いています(笑)。楽しんでいただけたら、本当にもう恐縮ですという感じです!

――先生方、本日は長時間ありがとうございました!

よよはちナツノアメ:ありがとうございました!!


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にわかあめ(よよはち×ナツノアメ), サテライト・コインランドリー(2), KADOKAWA, 2023

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にわかあめ(よよはち×ナツノアメ), サテライト・コインランドリー(1), KADOKAWA, 2023

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Nico, 編集長

マンガ好きの両親から生まれたマンガ狂い。欧州最大級のカルチャーイベントで運営・通訳を経て、『ComicAddict』の編集長に就任。

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